神原文庫について

神原文庫

神原かんばら文庫ぶんこは、 (旧)香川大学初代学長故神原かんばら甚造じんぞう氏(1884〜1954)の蔵書コレクションで、 図書・資料約12,000点、 16,560冊(和漢書15,890冊、洋書670冊)その他から成ります。

神原氏は1884(明治17)年香川県多度津村(現・多度津町)に生まれ、 京都帝国大学卒業後司法官となり、 京都・大阪・神戸・東京で判事を務め、 1945(昭和20)年に大審院部長判事となり退官しました。 その間、 京都帝国大学・早稲田大学・中央大学等で刑法や民法の教鞭を執り、 また神原彩翅あやはの号で歌人としても名を成しています。 退官後は弁護士を開業しましたが、 1949(昭和24)年、 香川大学の開学にあたり初代学長に迎えられました。

本文庫は、 神原氏が法曹人や歌人として活躍の傍ら、 長年に渡り古書市場を渉猟し蒐集したもので、 その内容は、刊本書籍・手稿類・公文書・古文書・絵画史料・古地図類・雑誌類等多岐に渡っています。 例えば、 江戸時代後期から明治初中期にかけての洋学関係はじめ当時の文化社会の動向を伝える資料、 朝鮮版『伊路波』・西鶴の『嵐無常物語』下巻・ハルマ『蘭仏辞典』第二版などの秘籍、 明治初期の錦絵版画・錦絵新聞等々、 実に多彩なものがあります。

明治から昭和初期にかけて、 文書典籍等の文化財が大量に市中や海外へ流出しましたが、 それらを政財界・学界・思想界その他様々な背景を持つ知識人層が収集していった流れがあり、 神原氏の蒐書もそのひとつに位置づけられます。

デジタルアーカイブ / コンテンツポータル

神原文庫コンテンツのデジタル化については、 当館においてこれまでに40点の高精細カラーデジタル画像データを製作しています。

また、 国文学研究資料館がカラーデジタル撮影した高精細画像100点及び1974〜1975年にマイクロフィルム撮影したモノクロ画像340点が、 「国書データベース」で公開されています。

以上延べ480点のデジタルコンテンツは、 香川大学学術情報リポジトリ(OLIVE)からポータル(一覧)検索・閲覧できます。

本ポータルでは、 神原文庫の文書典籍のほか、 目録、展示資料、解説・解題記事等も検索一覧できます。

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ピックアップコンテンツ

嵐無常物語

嵐無常物語 下巻   貞享5(1688)年刊

井原西鶴作の小説で、 以後流行した「役者の最後物語」の嚆矢。

主人公嵐三郎四郎は実在の歌舞伎役者で、 美貌の名優として一世を風靡したが、 貞享4 (1687) 年12月27日に25歳の若さで自死を遂げた。 本作はその最期までの生涯と後日譚を題材としたもので、 事件後僅か2か月半の貞享5(1688)年3月中旬に刊行された。

天下の孤本であり、 上冊が天理図書館で、 下冊が神原文庫で発見されたことにより、 作品の全貌が明らかとなった。


長崎市中地割繪圖

長崎市中地割繪圖   嘉永4(1851)年製作

地図が納められている箱の表に、 タイトル「長崎市中地割繪圖」、 裏に作成者と作成年月日が書かれており、 嘉永4(1851)年9月に作成された地図であることがわかる。

長崎の中心部をこれだけ詳細に描いた地図は他に類を見ない。

同時代に作られた他の長崎地図と異なり本図では、 オランダ人の住む出島と中国人の住む唐人屋敷については輪郭のみで詳細は示されておらず、 それに対して日本人の住宅に関しては間口と奥行きが書き込まれている。 また、 現代の地図ではランドマークとしてまず書き込まれるであろう寺院や神社については、 周囲に名前だけ示されているのみであり、 本図の作製目的が長崎市内の住宅事情に関する調査であったことが推測される。


伊路波

伊路波   弘治5(1492)年刊

正統11年(世宗28年、西暦1446年)に訓民正音(ハングル)が公布されて間もない弘治5年(成宗23年、西暦1492年)に、 朝鮮人のための日本語学習書として刊行された書物。

天下の孤本であり、 朝鮮にも現存していない。

前半は日本の文字の説明で、 4種類の仮名(平仮名・片仮名・真仮名2種)による「いろは」47字、 変体仮名33字、 および書簡文で多用される漢字13字の一覧である。 平仮名・変体仮名・漢字にはハングルで読みが付されており、 当時の日本語の音声を知ることができる。

後半は4通(往復2組)の書簡文例が収められている。


古筆手鑑 古筆手鑑

古筆手鑑   年代未詳

一般的に「手鑑」とは、 筆跡鑑賞のためにいくつもの聖教(経典)・歌書・消息などからその墨跡の一部を切り取って蒐集し、 台紙帖に貼並べたものをいう。

この手鑑は、神原氏がそれぞれの墨跡を収集して自身が手鑑にまとめたのではなく、 すでに手鑑の状態となっていたものを入手したものである。

内容は、 検討の余地のあるものも若干含まれるが、 いずれも歴史上著名な人物の墨跡ばかりで圧巻である。